ドラマ「アンメット」を観て
こんにちは。
わたしスタイルLABOのacoです。
ふだんはテレビドラマをあまり観ないのですが、先日久しぶりにサブスクで連続ドラマを観ました。
昨年(2024年)に放映された 「アンメット ― ある脳外科医の日記 ―」 という作品で、事故の後遺症による記憶障害で 1日しか記憶が持たない脳外科医 が主人公です。
主人公・川内ミヤビは、毎朝起きるたびに前日までの出来事をすっかり忘れてしまうため、日記を頼りに「昨日までの自分」を確認します。
古い記憶は残っているものの、事故の前後の記憶は抜け落ち、新しい出来事を覚えることも難しい。
医師という立場で患者さんに向き合いながら、自分自身の障害とも向き合っていかざるを得ないというストーリーでした。
もちろんドラマなので演出はありますが、作中で描かれる 「新しい記憶が残りにくい」=前向性健忘 は、医学的にも実際に存在します。
そしてミヤビほど重くはないものの、わたし自身も脳卒中による「記憶障害」があるため、主人公の姿は決して他人事ではありませんでした。
脳卒中後に起こる記憶障害とは
脳卒中では、損傷した脳の部位や出血量によってさまざまな後遺症が出ます。
その一つが 記憶障害(記憶の困難) で、これは外からは気づかれにくい「見えない障害」の代表とも言われています。
脳の記憶に関わる主な領域は、
- 海馬
- 側頭葉
- 前頭葉
などで、これらが梗塞や出血によってダメージを受けると、記憶のプロセス全体がうまく働かなくなります。
脳卒中後の患者さんでは、短期記憶や新しい情報の保持が難しくなる例 が多く報告されています。
主な症状は大きく分けて3つ
◉新しい記憶が覚えにくい(前向性記憶の障害)
新しい予定、人の名前、今日の出来事が頭に入りにくく、数分〜数時間で抜け落ちることがあります。
ドラマのように「1日でリセット」ほど極端でなくても、
- 会話が続かない
- 言われたことをすぐ忘れてしまう
など、日常でつまずきが出ることがあります。
◉昔の記憶が抜け落ちる(逆向性記憶の障害)
脳卒中の前後の記憶が曖昧になる方もいます。
特に、発症前後の記憶は失われやすいと言われています。
◉注意力・ワーキングメモリの低下
記憶そのものよりも、
- 注意を持続する力
- 複数の情報を同時に処理する力(ワーキングメモリ)
が低下することで「覚えられない」と感じるケースもあります。
これは高次脳機能障害の一部であり、見た目では分かりにくい症状です。
脳卒中の記憶障害とひとことで言っても、原因も症状も苦しさも本当に人それぞれ。
わたしも当事者になるまで、その複雑さには気づけませんでした。
わたしの記憶障害
わたしにも脳卒中後の記憶障害があります。
特に 短期記憶がとても苦手 になりました。
誰かに頼まれたことを数分で忘れてしまうこともありますし、複数の情報を一度に処理するのが難しくなりました。
料理の段取りや出かける準備など、以前なら何も考えなくてもできていたことに時間がかかります。
さらに右半身麻痺の後遺症があり、利き手である右手がうまく使えません。
利き手交換をしたものの、すぐにメモを取ることが難しく、字を書くにも時間がかかります。
「覚えられないのにメモもすぐ取れない」
この二重の困難は、発症直後のわたしにはとても厳しいものでした。
ただ、いまは少しずつ工夫で乗り越えられるようになってきています。
記憶サポートの工夫
スマホのメモ帳をフル活用
思いついたことや頼まれたことはすぐスマホに記録。
文字入力が難しいときは音声入力が大活躍です。
カレンダーアプリで予定管理
予定はすべて、スマホのカレンダーアプリに入力。
出る時間から逆算をすることが難しくなったので、準備や移動時間まで書いておくと、当日慌てないし抜け漏れが減りました。
リマインダーで服薬管理
薬を飲んだかどうか忘れてしまうので、スマホのアプリで管理しています。
時間ごとにリマインドが出るし、何度もリマインドされるので飲み忘れを防げます。
また前日の夜に、翌日飲む薬を台所の目立つ場所に並べておく習慣をつけました。
これだけで「あれ?薬飲んだっけ?」と悩むストレスがなくなりました。
写真をメモ代わりに
資料・場所・パッケージなど、写真で記録。
片手操作でもできるのでとても便利です。
「記憶に頼るな、記録しろ」
これは起業時に先輩経営者に言われた言葉です。
健常者でも、「覚えたつもり」が忘れているということは起こりますよね。
脳卒中後はこの習慣、覚えずに記録しておく ことが自分を助けてくれています。
頭だけで覚えようとすると失敗するので。今は手書きではなくツールに頼るようにしています。
見えない障害としての記憶障害
記憶障害は外から見えません。
そのため誤解されやすく、
- 「さっきも言ったよね?」
- 「どうしてすぐ忘れるの?」
と思われることも。
それにより、当事者はつらさや申し訳なさを抱えがちです。
しかし、脳卒中後の記憶障害は“怠け”ではなく、脳の機能が損なわれた結果として起こる症状です。
周囲が理解し支えてくれると、本当に助かります。
「忘れることは仕方ないよ」
「メモしておこうか?」
そんな声をかけてもらえるだけで、気持ちが軽くなるのでありがたいです。
もちろん当事者の工夫も必要ですが、周囲の理解があれば、記憶障害があっても日常生活は通常通り送ることができます。
最後に
「アンメット」を観て、脳の障害がどれほど日常を揺さぶるのかを改めて感じました。
脳神経外科を舞台にしたドラマなので、ミヤビだけでなく、失語症・半側空間無視・片麻痺など、さまざまな症状をもつ患者さんが登場します。
※失語症についてはこちら↓
失語症って知ってる?脳卒中による失語症の世界を当事者が解説
脳血管障害が引き起こす多様な障害や、その困難さが多くの人に伝わればいいなと感じました。
脳卒中後の記憶障害は人によって症状も程度も異なりますが、工夫やツールの力で生活はぐっとラクになります。
見えない障害だからこそ、当事者の工夫と周囲のあたたかい理解が大きな助けになります。
わたしもこれからも、自分の状態と向き合いながら、できる工夫を続けていきたいと思います。
まだ観ていない方は、ぜひ「アンメット」観てみてくださいね。
