症状も後遺症も十人十色
この病気に限らず大きな病気や怪我をすると、同じ病気(または怪我)をした他の人たちはどんな症状だったんだろうとか、どんな経過を辿ったんだろうとか知りたくなるものだ。また自分で調べなくても、自分または家族、時には友達や知り合いが同じ病気だったという情報が良くも悪くも集まってくる。
励まそうとして言ってくれるのだろうけど、脳の病に関しては「○○さんはこうだった」という話は参考にはなるがあまり役に立たない。おなじ脳卒中でも脳のどこの部位なのか、軽くつまっただけなのかまたは詰まって血管が破裂したのか、詰まりもせずいきなり破裂したのか、出血の量はどのくらいなのか、それらによって症状はまったく異なる。
加えて、それによって引き起こされる後遺症も、十人いれば十通り。わたしと同じ視床出血でも、視床のどの部分がダメージを受けたのか、数ミリ違うだけで後遺症の出方は違う。
3週間もの辛いリハビリを乗り越え…?
かく言う私の元にも「3度の脳卒中を乗り越え、、、」
という類のメールが来たが、その3度が一体どの程度だったはかわからない。どの部位が出血したのか、入院期間がどのくらい、リハビリがどのくらいかかって、どのような後遺症が残ったのか残らなかったのかもわからない。もし後遺症が残らなかったとしたら、ラッキーだっただけの話かもしれない。
また某有名スポーツ選手が、昔脳卒中で「3週間もの辛いリハビリを乗り越え」と言っていた記事を読んで、「え?3週間、、、?」ズコーっ!となった。自分をはじめ、今脳卒中で入院している人たちからしたら、正直その程度で済んでよかったですね…という話である。
ちなみにわたしは2週間後には退院するが、200日以上を病院で過ごした。退院してもまだまだリハビリ生活は続く。
脚も手も回復には年単位での期間を要するし、運動麻痺に関してはある程度の回復が見込めるかもしれないが、感覚麻痺に関しては一生付き合っていく覚悟でいる。

「手術しなかった=軽症」ではない
脳出血の場合、開頭手術していると急性期での担当は脳神経外科になる。わたしは開頭手術は行わず薬物療法なので脳神経内科だ。最初は、手術せずに薬の投与だけで済んだということは軽く済んだのだと思い込んでいた。
しかしリハビリ病棟に来て、手術しなくていいくらい軽症だったわけではなく、正しくは手術できなかったのだと知った。
出血したのが脳の奥く深くにある「視床」で、感覚を司どる神経の集まる場所だった。手術によって逆に他の神経を傷つけかねない。なので特別な場合を除き、通常は手術をせず点滴による投薬治療が行われる。
出血した場所や出血量を考えると、一歩間違えれば死んでいてもおかしくなかったし、今でも手脚に後遺症は残っているもののよくここまで回復したなと思う。