はじめに

こんにちは。
わたしスタイルLABOのacoです。

30年前、わたしは23歳のときにオーストラリアの公立小学校に、日本語教師として派遣されましたした。

滞在先は、当時あまり治安の良くない地域。
工場などに勤務するブルーカラーの家庭が多く、移民や難民として定住した人たちも多くいるような地域だったので、低所得者層の家庭も少なくありませんでした。

この地域で、1年の間に4軒の家庭にホームステイをさせてもらいました。
その体験から、社会保障が人に与える影響を目の当たりにし、今の日本にも通じる課題を感じています。

ホームステイ先で見えた現実

最初の2軒は、学校に通う児童の家庭でのホームステイ。
残りの2軒は日本語教師ヘレンの家と、彼女の知り合いの家にお世話になりました。
最後の家庭は学校とは全く無関係で、当時としては異例のステイ先でした。

この地域では受け入れ先が不足していた理由として、まず地域全体に経済的余裕がなく、多くの家庭が日本人を迎え入れるどころではなかったこと。

もう一つは、わたしがサポートしていたヘレンが「変わり者」として有名で、周囲からあまり良く思われていなかったことも影響していました。

そもそもネイティブの日本語教師の受け入れは、ヘレンの希望だったので。
そんな事情も知らずに行きましたが、わたし自身はヘレンが大好きでしたし(確かに変わってたけど)、この1年間の体験は色々な意味で本当に勉強になりました。

ホストファミリーが教えてくれた「保障と働く意欲」

最後に滞在した家庭では、ホストマザーが自動車工場で働き、ホストファザーは以前カーペンター(大工)をしていましたが、事故で怪我をしたあとは家にいました。たぶん当時40代後半か、50代前半くらいだったかと。

怪我の補償金が支給されていたため、怪我は完治しても身体が動かないことにして「働くより保障をもらっていた方が得だ」と考えるようになったと話してくれました。

さらに、その家庭の末娘は10代で母になったシングルマザー。いわゆる未婚の母でした。

相手とは法律婚も同居もしておらず、「その方が結婚するよりも社会保障が手厚くなるから」と。

当時のわたしは大きなカルチャーショックを受けました。
働く意欲を削ぐような保障の形が、人生設計に影響を与えていたのです。

保障が支えと依存を生む矛盾

当時のオーストラリアは「社会的弱者に手厚い保障を」という理念が強かったのかもしれません。制度としても非常に充実していました。

しかしその反面、制度を「利用する」ことが生活の選択肢となり、自立するモチベーションを失う人が生まれる現実も見ました。

「Take it easy!」な国民性もあいまって、「働かなくても食べていける」ことがむしろ自然に受け入れられているように思えました。

これが国として持続可能なのか、非常に疑問を感じたのを覚えています。

社会保障は「誰のため」かを考える

30年経った今、日本も医療や生活保護などの社会保障をめぐり、同じような構造的課題を抱え始めていると感じます。

しかも「支える人=納税者」が減り続ければ、当然同じ水準で社会保障制度を維持することはできません

それにも関わらず、制度にメスを入れずに票取りに走る政治家にはもううんざり。
有権者も、自分に都合の悪いことや、耳が痛いことは聞きたくないし、受け入れたくないものです。

本当は必要ない保証制度や、無駄が多過ぎやしませんか。
「自分さえ良ければいい」という考え方が、残念ながら蔓延している気がしてならないのです。

医療費が無料であれば、お金を気にせず気軽に病院に行く人が増える一方、普段真面目に働き納税している人ほど、自己負担があることで「医療費がもったいない」と必要な受診をためらう人もいます。

必要な支援をためらわせる制度も、必要以上に制度を利用するケースも、どちらも問題です。

本当に必要な人が安心して支援を受けられる仕組みを守るには、社会保障の理念を問い続ける必要があります。

保障の充実はもちろん大切ですが、人々の「自分で生きる力」を奪ってしまう形では長く続けられないのではないかと、あの頃の体験を振り返りながら感じています。

おわりに

30年前のオーストラリアでの体験は、今も社会保障のあるべき姿を考えるきっかけになっています。支援と自立のバランスをどう取るかは、日本でも避けて通れない課題です。

昨日から参議院選挙が公示されました。
物価高や社会の多様性といったテーマも重要ですが、わたしはなにより「持続可能な社会保障制度」に本気でメスを入れない限り、子どもたちに安心して未来を託せないと強い危機感を覚えています。

20年後、30年後を真剣に見据え、目先の人気取りではなく長期的な視野で行動できる政治家にこそ、わたしたちの未来を託したいと心から思います。

みなさん、ぜひ選挙には行きましょうね!
当日でなくても、期日前投票がありますから。
今度こそ、投票率が上がることを心から願います。