はじめに
こんにちは。
わたしスタイルLABOのacoです。
「どうして私はいつも自信がもてないんだろう」
「つい悪いほうに考えてしまう…」
そんなふうに悩んだことはありませんか?
フェネル著『自信をもてないあなたへ―自分でできる認知行動療法』は、そんな人のために書かれた本です。
この本では、「考え方(認知)」と「行動」を見直すことで、心の苦しさを少しずつ軽くしていく方法が紹介されています。
認知行動療法(CBT)は、うつ病、不安障害、パニック障害などの治療において世界的に効果が科学的に証明されている心理療法です。
ここでは、初めて聞く方にもわかるように、認知行動療法の考え方と、実際にどんなステップで取り組むのかをやさしくまとめました。
認知行動療法(CBT)とは?
認知行動療法は、「ものの見方」や「受けとめ方」を整えることで、気持ちや行動を楽にする方法です。
わたしたちは日々の中で、知らず知らずのうちに「自分の考え方」を通して物事を見ています。
たとえば——
- 友達から返事が遅いと、「嫌われたのかも」と思ってしまう
- 仕事で小さなミスをすると、「もうダメだ」と自分を責めてしまう
同じ出来事でも、人によって感じ方が違うのは、この「考え方のクセ(=認知)」が違うからです。
認知行動療法では、
⒈考え方のクセに気づく
⒉見方を少し変えてみる
⒊小さな行動を試してみる
⒋行動を少し変える
⒌振り返る
この5つのステップを繰り返しながら、心を軽くしていきます。
認知行動療法の5つのステップ
ステップ⒈ 自分の「考えのクセ」に気づく
まず大切なのは、「気づくこと」です。
気持ちが沈んだり、イライラしたりしたとき、
「今、どんな考えが頭に浮かんでいたかな?」と、少し立ち止まってみます。
たとえば、
- 「あの人の言い方、私が悪いってこと?」
- 「うまくできなかった。私はいつもダメだ」
- 「どうせ頑張っても無駄」
こうした思考は、「自動思考(じどうしこう)」と呼ばれます。
つまり、意識しなくても自動的に出てくる考え方です。
この「自動思考」を紙に書き出してみるだけでも、少し客観的に自分を見られるようになります。
ステップ⒉ その考えが本当に正しいか、確かめてみる
次に、「その考えは本当にそうだろうか?」と、自分に問いかけてみます。
たとえば、
「私はいつもダメだ」という思考が浮かんだとき、
- 「“いつも”って本当?」
- 「うまくいったこともあったんじゃない?」
- 「他の人が同じことをしたら、私はどう思うだろう?」
といった質問を自分にしてみるのです。
これは「思考の点検」とも呼ばれ、少し冷静に見直すことで、感情の嵐から抜け出しやすくなります。
「白か黒か」「全部かゼロか」という極端な考え方(=白黒思考)に気づくだけでも、心の余裕が戻ってきます。
ステップ⒊ 新しい見方を試してみる
考えを点検したら、「別の新しい見方」を探してみます。
たとえば、
「私はいつもダメだ」→「うまくいかないこともあるけど、できている部分もある」
「嫌われたかも」→「忙しいだけかもしれないし、まだわからない」
このように、ネガティブな状況や考え方を別の視点から捉え直すことを心理学では「リフレーミング(見方を変える)」と言います。
認知行動療法(CBT)におけるリフレーミングでは、状況を多角的に解釈し、ストレスの軽減や精神的な苦痛の緩和を図ります。
無理にポジティブに考えるのではなく、
「もう一つの可能性を見てみよう」という柔軟な姿勢がポイントです。
ステップ⒋ 行動を少しだけ変えてみる
考え方を変えるだけでなく、「行動を変える」ことも大事です。
たとえば、
「どうせうまくいかない」と思って避けていたことを、ほんの少しだけ試してみる。
小さな行動の積み重ねが、思考の変化を支えます。
フェネルの本では、この行動実験のステップが丁寧に説明されています。
実際にやってみて、「意外とできた」「思ったほど悪くなかった」と感じられれば、
「失敗=すべて終わり」という極端な思考が少しずつゆるみます。
ステップ⒌ 振り返って、次につなげる
最後は「振り返り」です。
どんな気づきがあったか、どんな変化を感じたかを、
ノートに書き留めておくと、自分の成長を実感しやすくなります。
記憶に頼らず、記録する。
できるだけ記憶の新しいうちに、書いておくことが推奨されています。
「できたこと」にも目を向けるのが大切です。
小さな一歩でも、確かに前に進んでいる自分に気づけるからです。
『自信を持てないあなたへ』の特徴と感想
フェネルの『自信をもてないあなたへ』は、よくある専門書のように難しい専門用語を使わず、初めてでも比較的実践しやすいように構成されています。
- 自分の考え方のクセを見つけるワーク
- ネガティブな思考をやわらげる質問例
- 自己評価を上げるための具体的な練習方法
が丁寧に紹介されています。
ただし、著者も書いているように、これを一人で完璧にやるのは容易ではありません。
思考の評価ステップも多いので、重荷に感じる人もいるのではないでしょうか。
少しずつ積み上げていくことが必要なのですが、セラピストやカウンセラーなどある程度の知識と経験を持った専門家と一緒に作業した方が楽なのでは……と思いました。
またこの本は英語で書かれたものを翻訳した本なので、どうしても日本人が感覚的に馴染めない訳語もあり、そこがハードルをあげてしまう可能性もあるのではないかと。
良書ではありますが、20年以上前に書かれているものなので、もっと馴染みやすい本がたくさんあると思います。今度、また認知行動療法の本を何冊か見繕って、読んでみたいと思います。
認知行動療法は「気づきの練習」
認知行動療法は、「ポジティブ思考になるための方法」ではありません。
どちらかといえば、「自分の考え方に気づく練習」です。
気づくことで、心のスペースが少し広がり、
「こうしなければ」「また失敗した」
といった自動的な思考の鎖から、少しずつ自由になっていきます。
わたしたちは、同じ出来事を経験しても、
「どう感じるか」「どう受け止めるか」で、まったく違う世界を生きています。
認知行動療法は、その「心のメガネ」を少しずつ磨き直すような作業です。
時にはせっかく磨いたメガネが、また曇り出すことがあるかもしれません。
そのような「揺り戻し」が起きても、焦らず、自分のペースで、気づきと行動を繰り返していくことが大切です。
